皇帝とポポフの浮かぶダンスホール
Russian Emperor's Yacht Livadia


Illust of Livadia

リヴァディア Ливадия のイラスト
あまり良い写真は残っていないらしく、完成状態のものはほとんどないようです。


ポポフ中将がロシア皇帝の求めに応じて設計し、イギリスで建造された、黒海に浮かぶ別荘「リヴァディア」について。

 この船は1880年ころに建造され、ロシア皇帝のヨットとして用いられたものです。要目などははっきりしたものが残っていないようですが、軍艦ではないのでたいした意味もありません。
 総トン数のデータはなく、排水量4,420トン、長さ71.63メートル、幅46.63メートルという数字が残っています。吃水は5.49メートルとあるのですが、船底からスクリューが大きくはみ出しておりますので、船体そのものの吃水はずっと浅く、2メートル内外ではないかと推測します。

Lines of Livadia

リヴァディアの簡単な図面

右下に図の解説があるのですが、ネットでは読めないかもしれません。いずれロシア語です。
一番右上の図、(10)と番号の振られた広い部屋が、およそ200平方メートルほどもあるダンスホール。
 その下の甲板、最前部(17)が皇帝の居室。その甲板最後部(11)が食堂です。


 ボイラーは8基、往復動機関3基を備え、速力は一説によれば16ノットとされています。出力には資料中に9,800馬力ないし12,000馬力ほどの数字が見られますが、それぞれがどういう状態だったのか読み取れないので、はっきりしたことは判りません。
 この速力は船型からすれば考えられない数値なのですが、文章中には最も大きなもので、15.725ノットという数字があります。計画値としては細かすぎる数字ですし、他にも14.88ノット、14.46ノットという数字があるので、この程度は発揮できたと思われます。
 極端に幅広の平底、浅吃水という特徴は、通常の排水船型とは違った理論に乗るのかもしれません。まさか、滑走したとは思いませんけど。

from Port-Quarter

おそらく建造中の写真
ダンスホールはあるのですが、煙突がありません。



As Prison Opit

後に監獄船となり『オピト』Опыт(経験の意)となってからの写真



Bird-view of Livadia

監獄船時代ですが、平面形の判る貴重な写真
煙突はまだ残っているものの運用はされていないようで、頂部には蓋がされています。
 最上甲板にあったダンスホール、後部の船長室などはなくなっています。


 数年前、御茶ノ水の交通博物館で、日本海事広報協会が出している雑誌「ラメール」の元編集長、三宅啓一氏が、自ら作りためた船舶などの模型を展示なさっていました。
 たまたまその準備中に同館を訪れた私は、三宅氏と会話し、話が「リヴァディア」のことになったので、その図面を所有していることを告げました。
 氏はこの船に強い興味を持っておられましたが、模型を制作できるほどの図面が入手できず、製作できずにいたのです。そこで私は手持ちの図面をコピーし、三宅氏に手渡しました。
 その結果として製作された模型は、氏が2001年に出版された「フリークシップス・酔狂な船たち」の表紙を飾ることとなったのです。もし、この本をお見掛けになったら、とても楽しい本ですので是非お手に取ってください。
 また、2006年4月には、三宅氏がご家族と協同で自らのホームページ「1/500 統一縮尺模型 船の歴史館」を立ち上げられました。下にリンクを作っておきますので、ご訪問ください。

Miyake's Freak Ships

「酔狂な船たち」・表紙
舵社・2001年10月15日発行・1,800円


 このページは公開期間限定としましたが、とりあえず「ポポフ中将の偉業」と題した円形砲艦のページとセットで公開します。下にリンクがありますので、そちらもご覧になってください。

参考文献
●Круглые Суда Адмирала Попова/В.Г.Андриенко
●Gebiete des Seewesens /Mittheilungen



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